27.Jun.2016オフィスが変わると人生が変わる | フィールドマネージメント

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世界が注目する経営コンサルタント、並木裕太さん。
フィールドマネージメントの代表取締役社長として活躍し、母校のペンシルヴェニア大学ウォートン校が発行する雑誌『WHARTON MAGAZINE』の企画「40 under 40(ウォートン校卒業生の40歳以下の40人)」に選ばれた唯一の日本人でもあります。

フィールドマネージメントが2015年6月にオフィスを移転して丸1年。今回のインタビューは東京の表参道駅近くにある、明るい日差しがきらめくオフィスにお邪魔しました。
気持ちのいい空間に癒されていると、並木さんは「オフィスが変わると人生が変わりますよ~」と楽しげにお話してくださいました。
さて、何がそんなに変わったのでしょうか?

以前は、オフィスに来ない日が“あたりまえ”だった。

コンサルタントの働き方はあまり想像がつかないのですが、どういう毎日なのでしょうか?

並木裕太 | フィールドマネージメント 代表取締役社長
慶応義塾大学経済学部卒。ペンシルバニア大学ウォートン校でMBAを取得。2000年、マッキンゼー・アンド・カンパニー入社、09年に独立、フィールドマネージメントを設立。エレクトロニクス、航空、インターネット、自動車、エンターテインメントなどの日本を代表する企業の戦略コンサルタントを務める。2015年に、MBA母校のウォートン校より、40歳以下の卒業生で最も注目すべき40人として日本人で唯一ウォートン40アンダー40に選出される。

著書に、「コンサル一〇〇年史」(ディスカヴァー・トゥエンティワン)、「ミッションからはじめよう!」(ディスカヴァー・トゥエンティワン)など多数。

「前職の頃からになりますが、コンサルタントの働き方は、外出先で仕事をしている時間が長いです。
自社に自分の席があっても、平日の日中はクライアントのオフィスに常駐したり、外出の合間に食事をしながら仕事を済ませ、会社へ戻らないことがよくありました。
地方案件の出張が多いプロジェクトに入ると、オフィスに寄らない毎日が続きます。
フィールドマネージメントも、以前のオフィスでは完全にノマドワークに振り切っていました。
全員で集まる日を月に一度だけ決めており、それ以外は皆それぞれ、スターバックスのような便利な場所を利用しながら、自分の仕事を進めている毎日でした。」

ノマドワークの加速が引き起こした“コミュニケーションが薄れる”という課題。 そこから第3の家を目指して。

ノマドワークが当たり前の人たちが、なぜオフィスづくりにパワーをかけたのでしょうか?

「最初はその働き方でも上手く回っていたのですが、徐々にノマドワーク中心となり、会社に寄らない日が当たりまえになっていきます。
そうすると、“会社としての一体感”とか“目標への意識”などが徐々に薄れてきたように感じ、僕もメンバーが悩んでいる様子に気がつかず過ごしていたように思います。
そのことに気がついてからは、自然とコミュニケーションが生まれるような場所、もっと気軽に相談や意見交換ができる場所が必要だと感じていました。
それで、『次のオフィスは、第3の家になっているスターバックスよりも心地よい場所をつくらないといけない』と思って、このオフィスをつくりました。」

現在のオフィスは、表参道のハイブランドがならぶ並木通り沿いに面していますね。とても明るくて気持ちが良いです。

「メンバーが立ち寄りやすい場所を重視して、物件を選びました。
さらに『あそこのお店の上です』という風に、わかりやすい場所であってほしいと思っていました。やはり、利便性のいい立地であることは、外出が多い僕らにとっては重要ですね。」

新しいオフィスで働いて約1年が経ちました。実際にメンバーの皆さんは働き方が変わりましたか?

「そうですね、以前より多くオフィスに戻ってきている実感があります。以前は週に1回程度しかオフィスにいなかったので、比べるなら3倍程度になりましたね。

以前の習慣では、来客があるタイミングに合わせてオフィスで作業時間をとっていたのですが、今はそういったことに関係なく、特に来客が無くてもオフィスに居るようになりました。

僕だけでなく、他のメンバーもオフィスへ戻ってくるようになり、大成功したと思っています。居心地がいい場所ができると、生活パターンも変わりますね。」

相手への理解を深めることができれば、前向きなコミュニケーションがとれる。

以前のオフィスでは『メンバーからの声をもっと聞きたい』という話がありましたが、そのあたりは、最近どうですか?

「以前とは少しずつ変わってきたと思いますね。例えば、これはあるメンバーの話ですが・・・スポーツの仕事がしたいと思って入社したのに、全く違う業界の仕事をしている人間がいました。

僕も気になっていましたが、月に一度しか顔を合わせない環境のせいか、一人一人とコミュニケーションを取り難くなっていました。

でも移転してから、自然と人がオフィスに居るようになって、『最近どう?スポーツの仕事できてる?』と、ふとした時に会話が生まれました。そうやって自然に生まれた会話から深い話になり、やはり本人が悩んでいるとわかりました。
僕は、本人がやりたい仕事に携わることも大切にしたいと思っています。ですから、そうやって相手への理解を深めることができれば、『じゃあ、あのプロジェクトが始まるから、もし興味があるなら関わってみようか』とか、前向きなコミュニケーションをとれるわけです。そうやって、少しずつ良い流れが生まれているように思います。」

原点回帰の気持ちで作った西海岸の雰囲気を思い出すオフィス

最初に「オフィスが変わると人生が変わる」という話がありました。それは一体、何を意味していたんでしょうか?

「あぁ、それは“オフィスの影響力を感じた”、という話です。新しいオフィスをつくるときに『どんなデザイン、どんな雰囲気にしたいですか?』という話になりますよね。

僕は新しいオフィスをつくるときに、原点回帰の気持ちを思い出せるよう、自分自身がアメリカ西海岸に居て、夢を抱いていた学生の頃が思い返せるような空間にしたかったんです。

僕は学生の頃から、アパレルブランド“STUSSY”のデザイナーだったショーン・ステューシーが大好きでした。このオフィスをつくるときは記事に掲載されていた彼のオフィスの写真や、彼が数年前に始めた“S/DOUBLE”というアパレルブランドのショップをデザインの参考にしてもらいました。」

憧れの人との仕事。難攻不落の営業先との契約。“やりたかった仕事”がやってくる!? 全てのきっかけはオフィスだった。

「オフィスの完成後、ショップで行われた展示会で、S/DOUBLEの日本総代理店であるインターミックスの木村社長とお話をする機会があり、相談を受けました。近々、デザイナーであるショーンが来日し、日本での契約条件を詰めるため、『コンサルタントとして手伝ってもらえるか』というお話を頂きました。すぐ翌日にオフィス来ていただき、詳細をお伺いすることになりました。」

「オフィスを見るなり、木村社長から『あ、本当にショーンが大好きなんですね』というコメントを頂きまして、これで話が前向きに進んだわけです。それからコンサルタントとして準備を整えているうちに、デザイナーであるショーンの来日の日が訪れ、彼がオフィスにやってきました。

彼はオフィスを一周し、『いいセンスしてるな』と言ってくれましたが、『いや、あなたを真似ていますから』と、笑いながらミーティングを始めたことをよく覚えています。僕としては、自分が夢を抱いていた学生の頃の雰囲気にしたくて彼を真似ていたら、『本人来ちゃった!』という感じでしたね。(笑)」

憧れの人が自分のオフィスに座って、仕事の話をできるなんて夢のようですね。

「ショーンは一週間の滞在中、毎日この部屋に午前中~昼過ぎ位までいました。ここで契約条件の話を詰めていました。息抜きに原宿を散策しながら、日本のアパレルショップを見学し、僕らは色々と話し合いました。

これは“オフィスが呼び込んだ縁”だと思っています。オフィスという目に見えるカタチで“自分の行きたい方向”というか、そういう雰囲気を体現すると呼び込んでしまうんだなぁ、と思いましたね。

呼び込む、というと・・・この話には続きがありまして。

実はその後も木村社長とのご縁があって、僕らフィールドマネージメントの洋服をつくることになりました。アメリカだと、とある会社の制服だった洋服が格好良くて、いまだに古着屋で売っていたりします。でも日本企業は会社の制服を売り出すなんて、聞いたことないでしょう。そんなことになったら面白いね、と話しながら作った洋服です。

ロンハーマンの三根社長には『洋服づくりばかりをしてきた人間が作る服は、どの程度売れるか予測できるが、パワーポイントばかりいじってきた人間が作る服は予測できない。だから面白い。』と言ってもらいまして、フィールドマネージメントのファーストコレクションをすべて買い付けて頂きました。この2016年6月中旬から千駄ヶ谷のロンハーマンで販売されています。

さらに、洋服をつくる事業を始めたおかげで嬉しい仕事が決まりました。長い間、営業をしかけても難攻不落だった、日本を代表する某プロ野球チームとの仕事です。ベースボールアパレル&グッズのMD戦略のパートナーに選んでいただきまして、本当に事業の幅が広がりましたね。」

「もし、オフィスが仮に近未来的なデザインのオフィスや、今と全然違うタイプのデザインだったとしたら・・・S/DOUBLEとの仕事は僕に来なかったかもしれない、と思います。

また、ショーンがここに来たとき、彼の空気感とオフィスの雰囲気が合わなかったら・・・「ホテルで打合せをしましょうか」という流れになったかもしれません。そうすると仕事の結果も変わっていたでしょうから、やはりオフィスが発している雰囲気が生む仕事ってあるなぁ、と実感した1年でした。」

友人に言われた「最近のフィールドマネージメントって、新しいこと無いね」

とても順調な仕事ぶりに思えますが・・・?

「うーん・・・オフィス移転の前は、友人に『最近のフィールドマネージメントって、新しいこと無いね』と言われるような時期でしたよ。それまではファンドをつくったり、新しいことを常に生みだしている感じがあったのですが・・・たしかにその頃は、言われた通り『次に何をやればいいんだろう?』と僕自身が思うような時期でした。
でもオフィスが変わってから、S/DOUBLEの木村社長と出会い、ショーンと出会い、ロンハーマンの三根社長と出会い、やりたかった球団の仕事をできるようになりました。
おかげで、『頑張んなきゃダメだな』と自分のやる気が出ていますから、いい刺激になったと思います。それが無かったら今頃『いつからハワイに住もうかな~』って思っていたかもしれません。(笑)」

“快適なオフィス”をつくるだけでは、期待以上の効果は得られなかった

今回、オフィスづくりに成功したポイントは何でしょうか?

「オフィスって、その時に進みたい方向性がにじみ出ていると思います。仮に、『快適なオフィスにしてもらえればいいので、あとはよろしく~』という依頼の仕方をしていたら、事業として期待以上の広がりは生まれなかったでしょう。

役職者に限らず、計画段階からしっかり意見をヒアリングしてくれて、一緒になってその方向を見据えてオフィスという空間をつくってくれる、そんな人たちにオフィスづくりを依頼するのが一番でしょうね。」

 

 

監修

代表 並木裕太氏

アドバイザリーメンバー

『WIRED』日本版編集部

PROJECT MANAGEMENT

株式会社ディー・サイン

INTERIOR DESIGN

NARING CREATIVE

施工

NARING CREATIVE

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