[掲載情報]SBテクノロジー株式会社が運営するWEBサイトに、取締役の今村剛が掲…
SBテクノロジー株式会社が運営するWEBサイトに、ディー・サインの取締役の今村剛と同社社長の阿多親市様との対談記事が掲載されました。
「こころを動かす空間創造のプロフェッショナル」として日本のディスプレイ業界をリードし、商業空間・文化空間・イベント空間など、あらゆる空間を手掛けている株式会社丹青社。
皆さんの生活に馴染んでいる、あの商業施設や、あの博物館も、同社が手掛けたものかもしれません。
そんな空間づくりのプロが集まる同社が、37年間オフィスを構えていた上野から品川に移転しました。
オフィスを移したこの機会に、働き方を大きく変えたそうです。
その気になる全貌を、株式会社丹青社 取締役 戸髙久幸氏にインタビューしました。
前編・後編の2回連載でお届けします。
移転を決めたのは、以前のビルも老朽化しており事業継続性を強化する必要や、現代の働く環境の変化を考えて、“私たちのオフィス・働き方がどうあるべきか”を考え直す必要を感じていたからです。
私たちには3つの主な事業部門(文化空間事業部、CS(コマーシャル/コミュニケーション スペース)事業部、SE(ストアエンジニアリング)事業部)があるのですが、最近はそれぞれの事業領域を超えてアイディアを出し合い、情報やノウハウを交換しながらお客さまへ提案することが増えています。
私たちは“総合ディスプレイ業”ですから、あらゆる分野のプロフェッショナルがいます。
各分野のプロの知識やアイディアを交換することで、お客さまへの提供価値向上につながると考え、これまで物理的に離れていた事業部門を集約することに決めました。
それにより新たなコラボレーションを生みだし、事業部門を超えた連携を強めたいと考えています。
以前はビルが2棟、17フロアに分かれていたため、事業部ごと、または事業部内でも同職種同士に、コミュニケーションが偏りやすい環境でした。
これを改善すべく、事業部門をワンフロアのオフィスへ集約しようと計画しました。
ビルの建て替え案などもありましたが、やはり一番実現したかったことが“コミュニケーションとコラボレーションの促進”でしたので、ワンフロアが広いビルに入ることが最善だと考え、決断しました。
移転を機に、ワークプレイスの刷新をすると共に、働きやすい環境づくりをハードとソフトの両面から実現したいと思って進めてきました。
いくつか候補はあったのですが、先にお話した通り、実現したいことを念頭において物件を選定すると、ワンフロアが広いビルは限られています。その中で、交通の利便性、BCPの観点からの立地の安全性、建物の設備条件、今後の再開発計画などのポテンシャルが決め手のポイントになりました。
さらに、この品川シーズンテラスを選んだ決め手として、ほぼ正方形で回廊型のカタチを具現化できるところもポイントでした。
私たちが目指す“コミュニケーションとコラボレーションを生みだす空間”をつくるには、フロアの形も重要です。
目指すオフィスのつくりが実現できるかどうか、検証して比べ、今のビルに決めました。
プロジェクトマネジメントを円滑に行えるよう、移転のプロジェクトチームを組んで、社内外からプロを巻き込み、進めてきました。
まず、今までの働き方の実態を把握するために、社員の時間の使い方、在席率、会議室の稼働率などを調査しました。
さらに、社員に対しワークプレイスのサーベイを実施し、“社員が何を重要視していて、現状何に不満を感じているのか”ということを調べ、働き方変革の立案をする前に実態を把握することからはじめました。
この他にも、社内アンケートを移転の前だけではなく、その後も定期的に続けながら観察しています。
たとえば「会議室が足りない」という声が多くありました。
しかし、よく調査をしてみると、仕切られた部屋の会議室が足りないのではなく、“予約の必要が無く気軽に話し合いを始められる場所”が欲しいという要望だった、ということがわかりました。
この結果を反映し、移転先の『コリドー』と呼んでいるスペースでは、クイックミーティングをできるような場所を多く設けました。
移転をする前から、社員へ徐々に情報やメッセージを伝えていき、不安を減らす努力をしてきました。
イントラネット内に特設ページを設け、情報を共有しながら意見も吸収していくことで、社員を巻き込んでプロジェクトを進めることが出来ました。
また移転が近づいてくると、新しいオフィスの取扱説明書のような情報を公開し、社員がそれぞれ心構えできるように働きかけました。
社員にも準備期間を与えることで、だいぶ不安を和らげることができたようです。
一番は、フリーアドレスです。
一部の社員を除いて、その日の業務内容や目的・気分にあわせて席を選ぶことができます。
しかし、社内から不安の声が一番大きかったのもこの部分でした。
特に多かったのは、固定席がなくなることへの不安の声です。
日中ほとんど外出している社員でも、自分の席が無い事を体験したことが無いわけですから、不安になります。
それに加えて、マネジメントをする社員は、自分の部下がどこで何をやっているのか把握しづらくなるため、きちんとマネージできるか不安に思っていたようでした。
ところが、実際移転をしてフリーアドレスを始めてみたら好評で、うまく稼働している様子です。
いつも同じ席に座らないように工夫しているようです。
2月1日に組織変更や人事異動があったばかりで、新しくマネージャーとなった社員もいます。
マネジメント側の本格的な取り組みはこれから見えてくることになると思います。
また、私たちの会社には仕事柄、時間がかかる仕事や夜間作業が発生する場合があります。アイディアを生むのは、短時間でできる仕事ではなく、時間がかかる仕事なのです。
ですから、以前より時間を有効に使い効率的な働き方にしたいと考えていました。それを実現するため、オフィスという空間だけでなく、ITツールやルールも見直しました。
移転を機に全社員にスマートフォンを渡し、会社の中のどこに居ても仕事をしやすいように、ネットワーク接続に無線LANを導入しました。
そして、外出先からでも社内のシステムにアクセスできるように変え、押印と回付が必要な書類手続きもワークフローシステムを見直し、どこにいても対応できるようにしています。
また、働き方を多様化する動きを制度面でも始めました。
例えば、シフト勤務やフレックス勤務という働き方を選べるようにしています。
事前申請が必要ですが、自分の都合に合わせて出社・退勤時間を前後にずらせる制度です。
産休明けで時短勤務だった社員の中には、シフト勤務やフレックス勤務などを選び、自分で時間を調整しながら再びフルタイムで働き始めた社員もいます。
さらに、今までの制度では、1時間早く帰りたい場合も、半日有休を取得するしかありませんでしたが、育児休暇・介護休暇(有休)を1時間単位で使えるようにしました。
これにより、育児や介護、子どものお迎えなどで、朝や夕方の時間を空けたいという社員の要望に対して、柔軟に応えられるようになりました。
まだ少人数ですが、全職種で在宅勤務の導入も試験的に始めています。
今はまだ始まったばかりですが、前向きな空気になっていると思います。
シフト勤務を推奨するため、毎朝行っていた朝礼とラジオ体操を無くしたので、朝9時ピッタリに朝礼があった頃の働き方と比べると、自由な雰囲気の会社になりました。
自由であることは、逆に個人の自律性が問われます。時間が自由な働き方になって、ゆるい雰囲気になってしまうようであれば、制度は検討しなおさなければいけません。
ですから、この状態を続けたいのであれば、自分を律して仕事に取り組むことが必要です。
そういった事も含め、ワークプレイス・ワークスタイルは、社員みんなで築くものだと思います。
【取材後記】
上野から品川に移転をして通勤路が変われば、個人の毎日のタイムマネジメントもかわりますね。
そうなると、社員のワークスタイルだけではなくライフスタイルにも影響がでます。
しかし、ITツールの導入や制度の多様化を実現したことによって、ハードとソフトの両面から働き方を変え、効率的な時間の使い方を促したことが、成功の要因に思えました。
移転するだけでも大がかりなプロジェクトですが、移転を目的とせず、その先に目指している働き方を見据えながらプロジェクトを進めているところをお手本にしたいです。
“移転して終わり“では社内から不満が出かねないですが、定期的な調査をもとに計画を進め、プロジェクト全体を大きな視点で見ながら、制度や空間のつくり方、さらにオフィスの運営方法まで細やかにケアしつづけてきた結果が出始めている、という印象でした。
プロジェクト期間:2014年9月~2015年9月
移転先ビル:品川シーズンテラス(2015年竣工)
入居面積:約1800坪[19階1500坪+20階約300坪]
入居人数:930名
プロジェクトマネジメント :株式会社ディー・サイン
デザイン監修・基本計画 :株式会社丹青社
基本設計 :丹青社(接客エリア、執務室ミーティングエリア)/ 岡村製作所(執務エリア)
実施設計 :岡村製作所
内装造作施工:丹青TDC
家具什器 :製作所ほか
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