[掲載情報]MODERNLIVINGにNEXT 10 CHAIRSを取り上げてい…
ディー・サインが起案した「NEXT10CHAIRS PROJECT」をMODERNLIVINGに取り上げていただきました。
昨今はダイバーシティという言葉をよく耳にしますね。
そもそもダイバーシティとは、性別・国籍・宗教・身体的及び精神的特徴の違いなど多様性を認め合い、互いを活かしあうこと。ここ日本では、日常でそのダイバーシティを実践する会社はまだまだ少ないかもしれません。
今回は、聴覚障がいがありながらも組織に貢献し、活躍なさっている株式会社丹青社の西岡克浩さんの働き方をひも解いてみましょう。
株式会社丹青社は「こころを動かす空間創造のプロフェッショナル」として、店舗などの商業空間、博物館などの文化空間、展示会などのイベント空間等、人が行き交うあらゆる空間づくりの課題解決をおこなう。企画からデザイン、制作、運営まで空間づくりのあらゆるプロセスをサポートしており、デザイナー職、制作職、営業職を含めた多様な専門力をもった人材がチームで働いているのが特徴。
全社の従業員数841名(単体)
障がい者雇用者数7名
佐々木氏:当社には聴覚障がいの社員が多いのですが、その多くはCGを制作する部署で活躍しています。もともと筑波技術大学(旧・筑波技術短期大学)という、視覚障がい者・聴覚障がい者のための大学の教授と交流があり、西岡も筑波技術短期大学(現・筑波技術大学)の卒業生です。
障がい者雇用には、国からの補助金等の制度がありますが、なにより、デザインに係る高い技術を持つ方が多くいるため、その能力に魅力を感じ、採用しています。
西岡氏:聴覚障がいがあり、言葉の聞き取りが難しい、状況がつかみにくい「情報障がい者」です。また発声があまり良くないので、伝わりにくそうなところは筆談で会話していますが、メールやチャットも活用しています。
佐々木氏:他の社員と平等に考えているため、特別な支援制度は設けていません。あえて言うなら、今年から「UDトーク」というマルチプラットフォームアプリの法人向けプランを導入しており、コミュニケーションの向上に役立てています。
UDトークは話した言葉が文字として画面に表示されるので、どんな会話が行われているか、その場で理解することができます。音声認識は100%ではありませんので、ある程度の修正は必要となりますが、会議の議事録代わりにもなります。また、多言語翻訳機能もありますので、外国語の翻訳用途としても使えるアプリです。
当社では全社員にiPhoneを配布していますので、全社員がこのアプリを活用できます。新しい技術も活用しつつ、障がいがある社員も含めて部門横断でコミュニケーションを図る社内イベントを開催するなどの、こころのバリアを低くするための活動も行ってきました。技術を活かすには人の意識が大切なので。
西岡氏:UDトークは複数人で使うアプリですので、利用するときは相手の理解が必要です。誰でも、これをポンッと渡されたら戸惑ってしまうことでしょう。でも、聞こえない人にはこれがないと状況が把握できません。相手にそれを理解してもらえるようにお願いする必要があります。(UDトークには外国語翻訳機能もあるのですが、)会議に外国人が参加しているのと同じように、相互理解のために必要だと捉えればわかりやすいと思います。
西岡氏:働き始めたときは、聞こえる人との間に大きな壁を感じました。コミュニケーションを取るのは、仕事に関係のあることだけで、一日中パソコンとにらめっこしていた気がします。
前職では、手話サークルがあり、会議に手話通訳できる人が同席してくれていましたが、転職した当初はどうして良いか分かりませんでした。
会議では、出席者にできる限り書いて伝えてもらうようにお願いしましたが、なかなか必要最低限なことしか書いてくれないものです。会議のメモを見せてくれるのは後になりがちでした。その“後で”というのが、私には残念に思いました。
後からでは、得られる情報が少ない上に、質問や意見がその場ではいえません。
しかし、今年からUDトークが導入され、リアルタイムにコミュニケーションが取れるようになりました。これは大きな変化です。
西岡氏:私はコミュニケーションをとるのに時間がかかりますが、仕事を進めるためには、どうしても十分なコミュニケーションが必要となります。1日の3分の1位の時間を、メールを含む何らかのコミュニケーションに費やす場合もあります。
西岡氏:私はフリーアドレスのほうが良いです。仲間に声をかけやすくなりました。メールでのコミュニケーションよりも、みんなと顔をあわせてコミュニケーションをするほうが好きですし、文章以上に伝わるものがあります。席が自由になった分、今のほうが気軽に声をかけられますね。
原田氏:“支援型リーダーシップ”という心構えが重要だと考えています。ダイバーシティへの対応という観点においては、部下を引っ張っていく“統率型”や“管理型”と言われるリーダーシップは不向きではないかと思います。
“統率型”・“管理型”というのは、目標に向かって部下を引っ張っていくというやり方になります。“支援型”というのは、部下の主体性を尊重し、適切な支援を行いながら働きやすい環境を作り、その人の潜在能力を引き出すやり方をいいます。
当社では、多様な人たちの能力を引き出すことを重要視していますので、そのためにそれぞれの働き方に対応できる“支援型リーダーシップ”を心掛けています。
「部下に任せてしまって、大丈夫か?」と思う方もいるかもしれません。もちろん、能力や意欲が備わっている相手であることが大前提であり、そのうえで、自主性を引き出すことになります。例えば、部下が自身の判断のみで行動するのとは違います。自主的と自由は別物ですから。向かうべき方向へ導くのも“支援型リーダーシップ”の役割だと思います。
このイベントでは、八丈島の豊かな自然のもと、障がいの有無・年齢・性別・国籍に関係なく、多様な参加者が集い、キャンプという日常生活より少し不便な環境の中で、互いに協力し、サポートし合います。
ユニバーサルキャンプは“小さな村”、そして、“ダイバーシティを実践する村”だと思います。120人くらいのいろいろな人がいる自然豊かな“小さな村”で、ともに生活し、「ダイバーシティとは何か?」を考え、気づきを得ることができる企画です。
ユニバーサルキャンプには当社のような空間づくりの企業だけではなく、様々な業界の企業人も参加します。ここで出会った多様な参加者から得たヒントが、ユニバーサルデザインやユニバーサルサービスを実践する仕事につながることがあります。
例えば我々とは別の業界にあたりますが、プロダクトメーカーさんもユニバーサルデザインに対して知見をお持ちです。
そんな方々と「どんなユニバーサルデザインの取り組みをしているのか」などの情報交換や、「一緒に何か取り組めるといいですね」という話ができるのが、このイベントの魅力の一つです。
「ハード」のユニバーサルデザインだけでなく、情報を保障する「ソフト」のユニバーサルデザインや、おもてなしに通じる「こころ」のユニバーサルデザインに対しては、まだまだできること、やるべきことがたくさんあることを感じます。それを解決するには当事者を含めたいろいろな人との交流や対話が不可欠です。
“小さな村”での経験は、空間づくりをする当社はもちろん、様々な業界、分野でこれから役に立つものだと思います。
西岡氏:出来る限り、様々な背景を持つ人の意見を聞いて、デザインを形にすることを大切にしています。
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