10.Dec.2025 COLUMN ハイブリッド時代の社内コミュニケーション活性化ガイド |ツールより“人の関係”をデザインする〜
ハイブリッド勤務で薄れがちなつながりを強化するための実践ガイド。今日から始められるものから仕組み化まで、厳選した20のコミュニケーション施策を含めて紹介します。
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目次
社内コミュニケーションの再定義
ハイブリッド勤務がもたらす課題と再設計のポイント
組織文化としてのコミュニケーション
社員一人ひとりが参加できるコミュニケーション施策20選
弊社のコミュニケーション施策 実践事例
失敗しないための運用と今後の展望
社内コミュニケーションの再定義
「社内コミュニケーション」とは何か
社内コミュニケーションとは、社員同士が必要な情報や考え、気づきを共有し、仕事を進めやすくするための土台です。単なる会話ではなく、安心して話せる関係づくりにつながるため、企業文化の中心的な役割を担います。
リモートワークやハイブリッド勤務が広がる中、オフィスで自然に生まれていた雑談や偶然の対話が減りました。
その結果、「誰が何をしているのか見えにくい」「話しかけづらい」と感じる場面が増えており、いま多くの企業で“社内コミュニケーションを再設計する必要性”が高まっています。
経営課題としてのコミュニケーション
社員のエンゲージメントや生産性、離職率──これらの多くはコミュニケーションの質と直結しています。とある調査※1では86%の企業が“コミュニケーション不足が業務に支障をきたす”と回答しています。コミュニケーションが活発な企業は意思決定が速く、チームの信頼度も高く、結果的に業績が向上する傾向※2があります。
一方、社内のつながりが希薄化すると、情報の属人化や誤解、孤立感が広がり、離職リスクを高めます。そのため、“人をつなぐ仕組みを経営戦略の一部とする”ことが、いまの企業経営のポイントです。
ハイブリッド勤務がもたらす課題と再設計のポイント
情報格差と心理的距離の拡大
ハイブリッド勤務では、オフィス勤務者とリモート勤務者の間に“情報の非対称性”が生じやすくなります。会議後の雑談や廊下での立ち話といった非公式な情報が共有されず、「自分だけ知らない」と感じるケースが増えています。ハイブリッド勤務に対する調査によると、この見えない壁を放置した場合、「業務効率だけでなく心理的安全性にも悪影響を及ぼす」というデータがあります。※3企業は、物理的距離を超えて情報や感情を共有できる仕組みを意図的に設計すべきです。
コミュニケーションを再設計する4つの視点
次の4つを意識してトライしてみましょう。
☑情報の流れを整える
議事録やチャンネル運用ルールを明確にし、誰でも必要な情報にアクセスできる環境を提供。
☑雑談を仕組み化する
「オンライン雑談ルーム」や「ランダムコーヒー」など、偶発的に会話が生まれる仕組みを設計。(「雑談が多い職場ほど心理的安全性が高い」「雑談がチームの信頼醸成に寄与」という調査結果より。※4)
☑称賛と感謝を可視化する
「#GoodJob」チャンネルやピア・ボーナス制度などを活用し、日々の努力や貢献を“見える化”。
☑伴走型マネジメントへ転換する
定期的な声がけや状況確認をとおして、メンバーが困りごとを相談しやすい関係性を構築。
組織文化としてのコミュニケーション
社内コミュニケーションを活性化するうえで重要なのは、制度や仕組みだけではなく、日常の会話そのものを少しずつ変えていくことです。ここでは、チームの心理的安全性や協働を促す「5つの会話の型」を紹介します。
☑未来志向の会話「フィードフォワード」
過去の反省よりも、「次はどうする?」という未来に向けた対話を増やす。
☑背景やストーリーを共有する会話「ナラティブ共有」
成果だけでなく、そこに至る考え・意図・工夫を語り合うことで理解が深まる。
☑振り返りの会話「グループ・リフレクション」
会議の最後に一言ずつ感想を共有し、気づきを持ち帰る習慣をつくる。
☑フラットな称賛・相談の会話「ピア・コミュニケーション」
役職、上下に関係なく「いいね」「助かったよ」と言い合える関係性を育む。
☑聴くことを大切にする「聴く文化の醸成」
傾聴・要約・共感など、“相手を理解しようとする姿勢”を習慣化する。こうした会話が積み重なることで、「話しやすく、聞き合える」関係が自然に根づいていきます。
社員一人ひとりが参加できるコミュニケーション施策20選
社内コミュニケーションの文化は、社員一人ひとりの小さな行動から育ちます。すぐ試せる施策から中長期の取り組みまで、課題や状況に応じて活用できるものを20選にまとめました。
◆ すぐにでもスタートできる施策(即実行型)
No 施策 解説 1 1日1thanks投稿 感謝を伝える習慣が心理的安全性を高める。 2 朝の5分トーク 朝会で一日一人ずつ自由スピーチ。共感のきっかけに。 3 週報に“今週の気づき”欄 学び・感情の共有がチームの信頼を育む。 4 改善共有ミニ朝会 小さな改善結果を共有し、チームで成長を感じる。 5 勝手に社内表彰 同僚の努力を称えることで称賛文化が根づく。 6
ペア・チェックイン
朝や週初めにペアで3分対話。「今の気分・今日やりたいこと・今日の目標」を共有し、心理的ウォームアップを行う。
◆ 運用の仕組みづくりが必要な施策(中期導入型)
No 施策 解説 7 部署シャッフルランチ 異なる部署同士の交流で理解を深める。 8 ランダムメンタートーク 他部署とのペアリングで新たな学びを得る。 9 スキルシェア会 社員が得意分野を共有し合い、尊敬の輪が広がる。 10 チームカードディスカッション カード形式で意見交換し、発言の壁をなくす。 11 雑談から生まれたアイデア共有 雑談を創造の場として再定義して開催。 12 お互いメンターデイ 上下関係を越えた相談文化を築く。 13 社内ローカルガイド共有 日常会話のきっかけとなるローカル情報を共有。
◆ ツール導入が必要となる施策(デジタル支援型)
No 施策 解説 14 #GoodJobチャンネル 社内チャットツール上で称賛を可視化し、感謝の連鎖を生む。 15 雑談支援AIボット AIが話題を提供し、オンライン雑談を自然化。 16 ランダムオンライン雑談 自動マッチングで偶発的な出会いを設計。 17 今日のデスク風景共有 写真投稿でリモートでも一体感を演出。 18 1on1後のミニコメント交換 対話を継続的な関係構築につなげる。 19 1分自己紹介動画 話題提供になりやすく、声をかけやすくする。 20 今の“?”を投げかけよう AI搭載型掲示板に投稿。オンラインで自然な相談や、思考の共有を生み出す。
ディー・サインでは実際に月に一度シャッフルランチを「月まかない」と名付けて実施。
弊社のコミュニケーション施策 実践事例
ディー・サインが日常的に行っている、小さな“仕掛け”もご紹介します。
● 会話のきっかけを生むフェイスボードコミュニケーション
オフィスの目立つ場所にあるホワイトボードを使って、毎月テーマを変えながら社員が顔写真マグネットで回答を共有するコミュニケーション施策です。「MBTIタイプ」や「10歳の頃の夢」、「GWはどこで過ごしたか」など、気軽に答えられるテーマで新しい会話のきっかけを生み出し続け、今や6年間続くディー・サインの人気企画となっています。
● 新入社者向けNEW看板
新しく入社した社員のデスクに“NEW”サインを1週間掲げます。これはお互いに声をかけやすくなり、スッと自然に挨拶を交わせる効果があります。
● 今日は○○さんDAY!
共有モニターに日替わりで社員の自己紹介を投影。直接的な業務の関わりが少ない相手でも、共通の話題を見つけやすくなり、会話のきっかけを提供。
● デスクトップ待受でCM告知
社内向けイベント情報などを共有PCの待受に設定。これにより、CMのような自然な周知効果を生み出す。※参考動画を参照。
これらの施策はどれも低コストですが、コミュニケーションの機会創出、社内イベントの活性化に役立っています。
失敗しないための運用と今後の展望
よくある失敗とその回避策
コミュニケーション施策は常にアップデートをする必要があります。残念ながら、人は飽きやすいもので、いつまでも同じというわけにはいきません。よくある失敗の例もご紹介します。
☑ツール導入で満足しない
目的を明確にし、運用ルールを共有する。
☑イベントが形骸化する
施策が形式だけの運用に陥らないよう、自発性を尊重し更新する。
☑部署間格差を放置しない
横断チームで現場主導の施策を作る。
☑数字だけを評価しない
会話量・雰囲気など定性的変化を観察。
☑短期成果を求めない
文化は“育てるもの”として長期視点でアップデートしながら運用する。
ハイブリッド時代に求められる「人の温度」
これからの社内コミュニケーションには「テクノロジーで効率化し、人の温度で深める」姿勢が必要です。ツールは会話のきっかけにすぎず、最後に人を動かすのは思いやりのある言葉と行動です。ハイブリッド時代の文化醸成には偶然に任せず、日常の声かけ・感謝・共感を意図的に積み重ねることが必要であり、これによって強い組織となります。
ディー・サインは、長年の実績とノウハウに基づき、お客様のオフィス環境をサポートしています。「つながりをデザインする」オフィスづくりは、ディー・サインにご相談ください。
私たちディー・サインは、単なる空間設計にとどまらず、働く人同士の関係性が自然に育まれる環境づくりをお手伝いしています。偶発的な会話が生まれる動線設計、リモートとオフィスをつなぐ空間演出、社員が思わず集まりたくなる仕掛けなど、コミュニケーションを軸にしたオフィスデザインをご提案します。
社内コミュニケーション活性化に関するご相談は、ぜひこちらからご相談ください。
出典一覧
※1 HR総研/「社内コミュニケーションに関するアンケート2024」
→ https://www.hrpro.co.jp/research_detail.php?r_no=379
※2 パーソル総合研究所/「職場での対話に関する定量調査」
→ https://rc.persol-group.co.jp/thinktank/data/dialogue-culture/
※3 モーガンマッキンリー(Morgan McKinley)「ハイブリッド勤務と従業員満足度に関する調査」:
→https://www.morganmckinley.com/jp-ja/article/%E3%83%87%E3%83%BC%E3%82%BF%E3%81%8C%E7%A4%BA%E3%81%99%E5%AE%9F%E6%85%8B%EF%BC%9A%E3%83%8F%E3%82%A4%E3%83%96%E3%83%AA%E3%83%83%E3%83%89%E3%83%AF%E3%83%BC%E3%82%AF%E3%81%AF%E5%BE%93%E6%A5%AD%E5%93%A1%E6%BA%80%E8%B6%B3%E3%81%AE%E9%8D%B5%E3%81%8B%EF%BC%9F
※4 パーソル総合研究所「職場の対話に関する定量調査 2024」:
→https://rc.persol-group.co.jp/thinktank/data/dialogue-culture/





